『全修』2話までの視聴レビュー:成功しきれていない理由とは?

新作のMAPPAのオリジナル作品、全修を見ています。現在まで、2話まで見ています。基本的には、初監督で舞い上がっている女性アニメクリエイターが異世界に転移してという話ですね。肝は異世界転移系でキーになりがちな、チートスキルですね。この作品の場合、アニメの演出家というところから、全修、すべてをリテイクというのがキーになっています。

また、特徴としては、事前のプレゼンとして、異世界転移を逆手にとって、いわゆるお仕事アニメと誤認させるようなプレゼンがなされていました。現代のシーンとかをいくつかつなぎ合わせて、そのようにミスリードさせる展開のPVにしていました。とはいえ、現在、投票は119人で、5段階評価で3点台とちょっと低迷している感じです。

さて、なぜ、成功しきれていないのかを考えます。一つのポイントはこの作品の場合、架空世界に入り込んでしまう形ですが、その世界が一種の劇中劇であり、その世界がいかにワークするかがポイントであると思います。『滅びゆく物語』というタイトルがついている作品として描かれていますが、これがワークするかです。この作品は世間では駄作評価だが主人公は好き。一種のカルト的ということです。

問題は、この劇中劇がワークしていないということです。いわゆる鬱展開でということですが、ルーク、ユニオ、メメルン、QJとなっていますが、これと鬱展開というのがいまいちかみ合っていないように見受けられます。ベルセルクとかみたいに、リアリスティックなファンタジーに全振りしていないと厳しくないかと思いました。妙にコミカルなキャラクターもいるのでかみ合ってないというか。

また、近作品の売りは、オールリテイクでナツ子がリテイクをかけるところですが、1話が多分、ナウシカの巨神兵、2話がマクロスの板野サーカスと過去の名作のリワインドになっているところですね。チョイス的にも妙に加齢臭があるというか、どの世代がアイディア出しをしているのかわかってしまうところがあります。結果的にB級テイストになっています。

劇中劇、作家による介入という点では、過去にRe:CREATORSという作品がありますが、この作品の場合には劇中劇も良く練られていたように思いますし。元ネタが露出しすぎて、B級テイストが露呈するような形は避けていたと思います。ナツ子の代表作とされている、スケバン魔法少女暗黒学園も正直、うーん、ちょっときつくないですか? 単純に言うと、Re;CREATORSの劇中劇は特に主要登場人物のセレジアの出身作品『精霊機想曲フォーゲルシュバリエ』なんかは見てみたいなという感がありました。しかし、『スケバン魔法少女暗黒学園』も『滅びゆく物語』もあまり魅力がないです。

多分、チートスキルの「全修」はペンは剣よりも強しというのを可視化したかったと推定しますが、現実にはペンは剣よりも弱しです。新聞とかが武力で踏みつぶされていった例は少なからずあります。ただ、ペンは剣よりも強いのは時間を味方につけられることです。武力による強者を誇っても永続させるのは困難です。しかし、ペンという不死の王は時間を超越することができます。ただ、それをチートスキルに仮託するのは困難ですね。また、結局、チートスキル発動で悲劇の回避というのがワンパターンすぎ丸ごと飽きられかねないです。

というか、この種の創作行為が現実には『夢戦士ウィングマン』という名作があり、逆に主人公から介入することでというところでは『デスノート』があります。特に『デスノート』は誰にでも名前さえわかれば理不尽な死を強制できるという作品です。そういった中で、作品のキーをどこに持っていくかは重要です。それが、どうもうまくかみ合っておらず、ふーんという印象を受けました。

特に、主人公の立ち位置の不在が変に見えました。まず、この種の異世界作品は異世界転移と異世界転生の二つが考えられます。異世界転生は主人公は既に死亡しているので元の世界へ帰還する方法がないのが特徴です。従って、転生先の世界で生きていくです。逆に転移は帰還方法があります。

異世界転生の代表的な作品としては、『無職転生』があります。この作品では異世界転生に見られるポイントが出そろっています。つまり、元の世界では満たされていない、後悔、やり直しです。従って、今までの人生に悔いがあり、人生をやり直すのが主題です。逆に転移は期間が前提ですから、一種のモラトリアム的要素などを含みます。従って、再発見などがポイントになるでしょう。

その視点でも、『全修』は何がポイントでしょう。そもそも、この主人公は鬱展開と言われる『滅びゆく物語』を愛しているわけですが、それを都合のいい展開で修正してしまえば作品性がぶち壊れてしまうわけですが。結果、何処が核なのかさっぱりわからなくなっています。要は何をしたいのか全く分からない。

特にチートスキルには制限として、なぜか同じような作品にしてはいけないというよくわからない制約が設けられていますが、これもあまりワークしていないと思われます。この種の設定は描きたい物語を作るために作られたときに機能しますが、それを考えないとよくわからないになります。

結論として、現状、凡作の域を出ていないというのがファーストルックになります。特に、劇中劇とその作品性がうまく調和していない、キャラクター、ストーリーテリングこの辺がブレているというのが致命的と思われました。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です